1999年12月21日 中部経済新聞 
 

 【明日を拓く】
金型製作、プレス部品加工の伊藤製作所(資本金3000万円、伊藤澄夫社長)は来年1月に増資し、名古屋中小企業投資育成会社が全額引き受ける。金型製作からプレス部品加工へと業容を拡大する一方、生産性の向上に向けて省力化機器の導入も積極的に進めてきた。96年には国内企業のグローバル化に対応して海外にも生産拠点を設けた。
「時代に即応した柔軟な体制づくりが必要」と話す伊藤社長に、資金使途や今後の事業方針を聞いた。

--プレス加工部分に力を注いでいる。
「複数の工程を一つの金型で仕上げる『順送り金型』を主力にしてきたが、現在はプレス加工が売上の70%を占めている。もともとは製作した金型のテスト用にプレス機を導入したのが始まりだが、金型は需要に大きな波がある。強引な受注に走るあまり、採算を悪化させてしまう傾向も強い。安定した受注確保に努めた結果が、現在の構成比になった」

--省力化への取り組みも早かった。
「人件費の低い東南アジアに対抗するには、生産性の向上しかないというのが理由だ。82年にはマシニングセンターを、翌年にはCAM/CAMを導入した。

--フィリピンの合弁会社が順調に伸びている。
「96年に現地法人と合弁でイトーフォーカス社を設立した。順送り金型とプレス加工を手掛け、従業員は現在40人あまり。当初は、国内受注が減少した場合のルートづくりと考えていたが、現地の日系企業からの安定受注で期待以上の成果を上げている。人件費の低さもあるが、スタッフの優秀さに加え、日本からの順送り金型メーカーの進出が少ない事も大きな要因。来年には利益体質へと転換できそうだ」

--今後の事業展開は。
「合弁会社に先駆け、91年に金型設計、CAD/CAMソフト開発部門を分社化してイートンを設立している。人件費の上昇や年金負担などを考えると、国内生産は厳しい環境しか予想できない。既存の取引先のニーズに的確に応えながら、グループ3社を有機的につなげたビジネスも展開していきたい。インターネットの進展で、海外との距離を通信技術がなくしている。将来的には世界をマーケットにした事業も手掛けたい」