伊藤製作所は1945年の創業から50年余り、モノづくりにこだわり、成長を続けてきた。この間、生産システムの充実、ISO9002の認証取得、合弁企業「イトーフォーカス」(フィリピン)の設立、名古屋投資育成会社の資本参加などにより、21世紀にもサバイバルできる体制が整ってきた。「同業他社よりも常に一歩先を行く」(伊藤澄夫社長)方針を展開してきた。鋭い時代感覚と技術力で常に時代にマッチした事業を展開している。
【一人当たり生産性は業界トップクラス】
同社は漁網機、ねん糸機械部品の加工からスタート。63年には順送り金型の設計製作を開始し、自動車関連へと分野を拡大。高速プレス、ワイヤカット、マシニングセンター(MC)、CAD/CAMなどの導入をいち早く行い、オイルショック以後、自動車産業の発展とともに成長を続けてきた。
伊藤社長は65年に入社して以来、部門ごとに一人当たりの付加価値生産性を常に頭に入れ、「どうしたら省人化、高速化できるか、精度を上げるには?不良率を減らすには?物流に無駄はないか」を考え、事業を展開してきた。その結果が一歩進んだ経営につながっている。原価低減を図り、時間あたりの生産性は業界でもトップクラスとなっている。
【フィリピン子会社が好調】
取引先の海外進出、生産国としてのアジア諸国と中国の追い上げ、世界同時不況で、国内の景気は好転しそうにない。「このままでは国内製造業は利益が出せなくなる」(同)と危機感を持ち、96年にはイトーフォーカスを設立し、順送り金型の設計製作、プレス部品加工を開始した。イトーフォーカスの取引先は日系、欧米系の一流メーカーで、自動車、家電、コンピューター部品を納入している。
フィリピンでは高度な技術レベルのプレス金型メーカーが少ない時期にいち早く進出したため、競争力が高まり、当初から受注は好調。質の高い社員を採用でき、高い技術レベルを維持している。5年で黒字に転換する計画が、4年弱で累積損を一掃した。イトーフォーカスはこれまで倍増のペースで売上高を伸ばしており、今後も「しばらくは年率30%増が見込まれる」(同)という。このため、2002年6月には工場を新築移転し、生産能力を5年間で5倍に拡大する計画。
【グローバル展開で経営基盤強化】
伊藤製作所のような系列でもない中小企業が単独でフィリピンに進出し、成功したのは、15年ほど前から海外に目を向け進出先を検討してきた先見性と単独で現地に赴き、情報収集できる人脈とノーハウが伊藤社長にあったことと、合弁相手や現地で立ち上げるスタッフに恵まれたためだ。
国内での成長が期待できないため、グローバル展開をしながら、グループで経営基盤を強化し、国際競争力を高める。今後はインターネットを使って世界から順送り金型を受注し、低価格、短納期で生産できる体制を整える。海外での生産規模を拡大するため、合弁会社以外に、フィリピンで2005年までに100%出資の子会社「イトーダイテックフィリピン」を設立する考え。