2001年1月18日 中部経済新聞 
 

――手品をはじめゴルフ、スキー、水泳、飛行機の操縦、和弓、ラジコンの政策・操縦など多彩な趣味を誇るのが、金型屋プレス部品などを生産している伊藤製作所社長の伊藤澄夫さんだ。「他人がやっていて面白そうだなと思うものは何でもやってみる」と話すように、好奇心の"塊"とでもいえよう。しかも手品はプロ級の腕前、ゴルフはHc7、和弓4段、スキー2級というから、"マルチタレント人間"と呼んで過言ではない。「遊ぶために生まれて来たようなものだね」と、"趣味人間"を自ら認める伊藤さんだが、今後は「スカイダイビングやスキューバダイビングなどもやってみたい」と、その探究心はとどまる事を知らない。――

幅広い趣味と言っても、会社社長という多忙な身体だけに、前述のようなすべての趣味を楽しむと言うわけにはいかない。「手品、ラジコン、和弓など奥が深いかなあ」としているが、中でも手品は伊藤さんが日常的にこなしている。トランプを中心に、レパートリーは400種類に達するといい、しかも「たえず頭の中では新ネタを考えている」というから、増える一方だ。

この取材中にも、お札やトランプを使った手品を披露し、記者を煙に巻く。財布やポケットの中にはコインやハンカチなどの小道具をしのばせ、いつでも実演して見せる。「結婚式や忘年会、取引先との懇親会などで手品を見せているが、年に2〜30回程度かなあ。仕事には直接関係のない会合でもゲストで呼ばれる事もある」とするように、"マジシャン伊藤"として、すっかり有名人となっている。

むろん、商談中でも突然トランプやお札を取り出すこともある。「あくまで仕事とは別だが、難しい話をしていても、手品を見せると、その後はすっかり打ち解ける事ができる」というから、やはりビジネス面でもプラス効果は大きいようだ。「大企業のトップの前でも手品を披露する事があるが、中には教えてくれと頼まれたりもする。わたしの名前も顔も覚えてくれ、すぐに親しくなれる」

手品の効果はそれだけではない。伊藤製作所はフィリピンに子会社があり、良く現地にも訪れるが、手品が縁で地元では伊藤さんはすっかりVIP扱いだ。知事や市長など要人ともパイプが出来ている。「現地の従業員とも食事をしながら、手品を見せる。こんなことをする経営者は現地にいないし、第一、向うでは上下関係が厳しいから、一緒に飯を食うこともないので、本当に喜ばれる」しかも、伊藤さんは英語が堪能ときている。
フィリピンに向かう飛行機の中では、キャビンアシスタントに手品をする事もあった。「すると扱いがよくなってね。そればかりか、コックピットまで案内してくれて、機長にも見せるように頼まれた。飛行機は自動操縦に切り替わっているから、別に安全に問題はない。私の手品を見て機長はすっかり喜んで、以来、フリーパスだ」と笑って言う。当然、ホテルでも伊藤さんは良く知られているそうで、快適な旅行も可能になる。

手品を楽しむようになって十数年と言うが、「高校の時からやっていたと級友に言われた」というから、元々手先が器用だったのであろう。「何でもやるが、あきるのも早い」とし、今もあれこれとネタを探している。「わたしは基本的に照れ屋でね、それを隠す為に手品をやっているのかもしれない」

伊藤さんの凄いところは、多様な趣味もさることながら、いずれもかなりのレベルに達している事だろう。ゴルフもそうで、「本格的にプレーをするようになったのは45〜6歳だが、50歳でシングル、52歳でハンディー7になった。練習などやった覚えがないというから驚きだ」
しかも「わたしのドライバーは210ヤードしか飛ばない」にもかかわらず、シングルを維持している秘訣は「アプローチとパット」という。ビギナーの頃からパットはうまく、パートナーが驚いたそうだ。ちなみに100ヤード以内だと、プロと競っても自信があるといい、事実「地元のあるプロとグリーンまで100ヤードの地点からチョコレートを賭けてやった。クラブフェースが手のひらのようなものだ」とさえ言い切る。「和弓や射撃を良くやった。元々的を狙うのが得意なのかなあ」と自慢気な表情。

伊藤さんが今までに最も楽しかったのはラジコンだ。模型を制作して操縦するわけだが、「必ず落ちるので、壊れた模型を修理してまた飛ばす。これが楽しい。ラジコンの飛行機、ヘリは本物より難しいよ」という。20年前には本物の飛行機で単独飛行をした事がある。
「いまは名古屋空港が満杯なので飛んでいない。常滑に新空港が出来たら、またやってみようか・・・・」と、周囲を心配がらせている。