2000年4月13日初版発行 日刊工業新聞 
 

◎ 品質、納期、価格に応える

自動車、コンピュータ、事務機器などの幅広い部品メーカーを取引先とする順送り金型メーカー。設立以来、7400型以上の実績を持ち内外で事業を拡大。社員一人ひとひがQCサークル、提案、勉強会、講演会を通じて、設計から製作の全工程を理解し製品づくりに取り組む。現場には最新設備を積極的に導入して、精度向上、高速化、無人化の追及に積極的だ。

◎ 順送り金型メーカーとしてのこだわり

1945年に三重県四日市市内で父親の亡き伊藤正一氏が漁網機械と撚糸機械の戦災復興事業として創業した。63年には、順送り金型の設計製作を始める。金型事業の実質的な推進者は、長男で現社長の伊藤澄夫氏。金型の将来性を見定め、金型技術の高度化を先駆けることが企業発展の道とばかり、新工場を建設し、最新の工作機を思い切りよく配備した。

引き続き83年には、顧客のニーズに一層応えるため、CAD/CAMシステム(サムシステム)を導入。ソフトの開発会社「イートン」が中心となり、順送り金型のレイアウト図面完了後、8時間以内に金型プレート加工のマシニングセンター稼動を実現している。ソフト会社を設立する一方で、フィリピンに合弁会社を設立して金型の現地生産に踏み切るなど、その果敢な経営ぶりは、業界の高い評価を得ている。

◎ 省人化、高速化で無類の高生産性工場

同社の金型は「使いやすい」「品質が安定している」「修理が簡単」「アフターサービスが良い」が特徴。金型で培った実績が、自動車部品、弱電部品メーカーから安定した部品製造の注文につながっている。目下、15〜300トンの自動プレスを44台保有し毎日100万個近くの部品を生産している。

不良品撲滅への取り組みにも懸命。この品質の安定を支えるのが、社員一人ひとりのモノづくりへの意識の高さと自慢の生産システム。QCサークルは、75年から活動を開始。現在も自主的に継続的に社内発表会を実施して26年目になるという。2000年7月のISO9002認証取得に向かって全社員が一丸となって取り組む。

同社の設備はハイレベル。「東南アジアの賃金が日本の十分の一ならば、日本は東南アジアの5倍の生産性をあげる必要がある」(伊藤社長)と、常に高生産性工場の実現に力を注ぐ。現在22台のCNC工作機の夜間無人運転が日常化、毎分700回転の高速プレスを頭に合理化が着実に進んでいる。

◎ 時代を素早くキャッチ、進化、・確信する頭脳の育成

21世紀に必要な技術開発と研究推進は重要なテーマ。国内外からの技術者受入れ事業も拡大する。これは自動設計による順送り金型の設計図面の販売、専用機の設計、CAD/CAMソフトの開発、NC工作機の加工データ作成、ダイセット・プレート加工など、金型加工と加工技術の指導を行うもの。フィリピンの合弁企業も軌道に乗り「伊藤製作所グループの連携で両国の友好に少なからず貢献できれば」としている。