2001年新年号 インパクト リンク 
 

次世代にらみISO取得、投資育成会社の投資先に

創業1945年。昨年12月、創業55周年を迎えた。順送り金型、プレス部品加工などを行なう伊藤製作所は昨年8月ISO9002を取得する一方で、名古屋中小企業投資育成会社の投資先企業となった。伊藤社長は「ISOの取得と投資育成会社の投資を受けた事により、公的でクリーンな企業である事を内外に示す事ができた。社員にも「がんばればポストがある」とわかってもらえ、人事の活性化にもつながる」とし、さらに投資育成会社の経営のアドバイスを「最高」と評価する。

≪グループ化で事業展開≫

同社は現社長の父親が戦後復興による漁網機械の部品加工で創業した。60年代から順送りプレス金型を手掛け、これを主力事業へと移行した。91年には、順送り金型設計、ダイセット製作、ソフト開発及び販売を行なうグループ会社「イートン」を設立した。

イートンの設計ソフトは、これまでのソフトに比べて大幅に設計時間を短縮できる「自動設計システム」であります。さらに1996年には、フィリピンに合弁会社「イトーフォーカス」を設立しており、すでに黒字経営を進めており、次の時代を担う事業として大きく期待している。
とはいえ本体の伊藤製作所を取り巻く環境は、楽観視できないものがある。なかでも主力ユーザーである自動車関連企業が海外へのシフト、部品の現地調達を進めており、競争力アップが避けて通れない課題となってきている。

≪取り巻く厳しい環境≫

それだけに「海外の製品との価格競争力のある物を作らなければならない。技術力では負けないが、日本の人件費を始めとするコスト高、慢性の円高、規制の多さなど国内でのモノづくりはどうしても不利。世界で屈指の日本の生産技術が一旦空洞化すれば、二度と戻ってこない。国は製造業の大切さを認識し、巨額の財政赤字、規制や税制のあり方などについて改善、改革をして欲しい。海外の企業が日本に進出したいと思うくらいの環境にするべきだと思う」と力を込める。

≪次世代の柱・フィリピンのイトーフォーカス≫

しかし、経営者としての伊藤社長の視点は次に向かっている。今後の目標はIT(情報技術)関連分野だ。「IT分野は高精度が要求されるものが多く、安易に海外に移転できないだろう。幸い、順送り金型の構造は同じだ。IT向けの設備投資は積極的にやっていきたい」とする。

さらに「国内で海外のライバルと競争できれば良いが、現在の環境ではそうはいかず、フィリピンに新会社を設立した。順送り金型の設計製作、プレス部品の加工を行なっており、コンピュータ、家電、自動車オーディオなどの部品を手掛けている。仕向け先は日系、欧米の一流メーカーで国内だったらとても取引できないような企業ばかり、創業から3年ほど経過、昨年6月から利益が出るようになった。NC工作機などの導入にも積極的で順調に推移している」と現状を分析する。

≪海外成功のカギは信頼できるパートナー≫

イトーフォーカスの生産能力と質の高さは、伊藤製作所が日本国内の自動車メーカーを相手に磨いた技術を移転したものだけに、折り紙付だ。その結果、受注は増える一方だ。米国スタンフォード大学経営学科卒業の現地社長はこの事業を高く評価しており、更に15000平方米の工業用地取得を計画、事業の拡大に意欲的だ。

中小企業が海外に単独で進出するのは難しい事が多々ある。こうした難題に伊藤社長はどのように取り組んだのであろうか。
「海外進出は10年以上前から検討した結果。27年間の中国系フィリピン人との交流からフィリピンに進出したもので、合弁会社設立は申し出てから5分で合意した。信頼を築いてきた結果」と、海外進出の鍵をパートナーの存在とする。フィリピンについては「小学校から全科目英語で学ぶ為、他のアジアの諸国に比べて意思疎通が図りやすい。その結果、技術指導が行ないやすい。さらに、フィリピン人は一般的に日本人に好意的」(伊藤社長)とみる。

又人材育成がうまくいったのも、成功の一端。友人でもある現地法人の社長が、優秀な技術者を確保し、日本に送り込んだ。彼等を日本で受け入れた伊藤製作所は3ヶ月みっちりと指導。「厳選された彼等なら十分できると感じた。日本に残って欲しかった」(伊藤社長)と評価する。日本からも優秀な技術者を送り込んでいる。イトーフォーカスの加藤美幸副社長はトップレベルの技術者で、立ち上げ時に通常3人かかるところを1人でこなした。

≪将来はネットで‐金型設計受注≫

今後の展開について伊藤社長は「日本の金型メーカーは、金型製作技術は得意だが、CAD/CAMを使って設計できる技術者はいつも不足している。『設計だけして欲しい』というニーズは日本でも海外でも多い。イトーフォーカスで金型設計者を育成・増員して、伊藤製作所の設計部門であるイートンと連携し、インターネットを使って24時間体制で設計すれば、国も時間も関係なく、グローバルな展開ができる。伊藤製作所もこれを利用すれば、納期、価格面で優位に立てる」として、グローバルネットワークで国内外でのモノづくりに取り組む考えだ。