2002年3月29日初版発行 日刊工業新聞社 
 

伊藤製作所は1945年の創業から50年余、モノづくりにこだわり成長を続けてきた。この間、生産システムの充実、「ISO9002」の認証取得、合弁企業「イトーフォーカス」(フィリピン)の設立、名古屋投資育成会社の資本参加などにより、二十一世紀にもサバイバルできる体制が整ってきた。
「同業他社よりも常に一歩先を行く」(伊藤社長)考えのもと、鋭い時代感覚と技術力で常に時代にマッチした事業を展開している。

◎一人当たり生産性は業界トップクラス

同社は 漁網機、ねん糸機械部品の加工からスタート。1963年には順送り金型の設計製作を開始し、自動車関連へと事業を拡大。高速プレス機、ワイヤカット、マシニングセンター(MC)、CAD/CAMなどをいち早く導入し、オイルショック以降、自動車産業の発展とともに成長を続けてきた。

伊藤社長は'65年に入社して以来、常に部門ごとに一人当たりの付加価値生産性を頭に入れ「どうしたら省人化、高速化できるか、精度を上げるには?物流に無駄はないか」を考え、事業を展開してきた。その結果が一歩進んだ経営につながっている。原価低減を図り、時間当たりの生産性は業界でもトップクラス。

◎フィリピン子会社が好調

1996年にイトーフォーカスを設立し、順送り金型の設計製作、プレス部品加工を開始した。「このままでは国内製造業は利益が出せなくなる」(同)と危機感を持ったため。イトーフォーカスの取引先は日系、欧米系の一流メーカーで、自動車、家電、コンピューター部品を納入している。

フィリピンではまだ高度な技術レベルのプレス金型メーカーが少ない時期にいち早く進出したため、競争力が高く、当初から受注は好調。質の高い社員を採用、高い技術レベルを維持している。五年で黒字に転換する計画が、四年弱で累積損を一掃した。これまで毎年倍増のペースで売上高を伸ばしており、今後も「しばらくは年率30%増が見込まれる」(同)という。

このため2002年9月には工場を輸出加工区に新築移転し、生産能力を5年間で5倍にする計画。

◎グローバル展開で経営基盤強化

伊藤製作所のような大手企業の系列でもない中小企業が単独でフィリピンに進出し成功したのは、15年程前から海外に目を向け進出先を検討してきた先見性と、単独で現地に赴き、情報収集できる人脈とノウハウが伊藤社長にあったこと、それに合弁相手や現地で立ち上げるスタッフに恵まれたのが理由。

取引先の海外進出、アジア諸国と中国の追い上げ、世界同時不況で、国内の状況は好転しそうにない。国内での成長が期待できないため、グローバル展開をしながら、グループで経営基盤を強化し、国際競争力を高める考え。今後はインターネットを使って世界から順送り金型を受注し、低価格、短納期で生産できる体制を整えていく。海外での生産規模拡大へ向け、合弁会社以外にフィリピンで100%出資の子会社「イトーダイテックフィリピン」を2005年までに設立する計画。